キノコ(菌根菌)の繁殖機構
キノコ(菌根菌)の繁殖機構
菌根菌の胞子
キノコから散布される菌根菌の胞子は、新たな菌根菌の個体が定着するために不可欠なものです。実は、多くの菌根菌は感染できる樹木の根が近くにないと発芽しないことが分かりました。感染できない植物の根ではだめです。菌根を作って樹木から炭水化物をもらわないと生きていないのですから、生き残れない場所で無駄な発芽を押さえるのはいい戦略だと思います。キノコの種類によっても胞子発芽の程度はいろいろなのですが、中には感染できる樹木のそばでも発芽しないものもあるんです。どういった刺激が胞子発芽に必要なのか興味深いですね。
菌根菌の胞子
キノコは動物や植物と違って個体を見分けるのが難しいです。一本一本のキノコが個体というわけではないからです。実はキノコは植物の花のようなもので、個体の一部でしかありません。離れた場所にあるキノコも、じつは地下の菌糸でつながっていて同じ遺伝子をもっといるのはよくあることです。これをどうやって見分けるかというと、人間の親子鑑定などにもつかわれるDNA解析手法を用います。ACACACといった単純な配列の繰り返し数をいくつも調べるとキノコでも親子鑑定ができたりします。
菌根菌の個体
DNAをつかってキノコの個体を識別してやると、個体の大きさがわかります。ウラムラサキやキツネタケといったキツネタケ属の個体はどれも小さいものばかりです。毎年多くの個体が入れ替わるので、胞子繁殖が盛んに行われているのが分かりました。植物でいえば一年生草本植物みたいなものでしょうか。
長生きする菌根菌
菌根菌の中には長生きするものもいます。ハマニセショウロは10m以上も大きなコロニーを作って、たくさんキノコを作るものもあることが分かりました。毎年、菌糸による栄養繁殖で少しずつ大きくなっているんですね。10m以上となると何歳くらいなのでしょうね。
マツタケも毎年少しずつ大きくなるシロから生えるのはよく知られています。マツタケも栄養繁殖で長生きする菌根菌の一つと言えるでしょう。ただ、マツタケのシロも必ずしも一つのマツタケ菌からできているわけでは無いことが分かりました。また、一本のマツにたくさんのマツタケ菌、一つのマツタケ菌にたくさんのマツがつながっていたりといったように、土の中ではキノコと木の複雑なネットワークができていることも分かりました。
菌核
ケノコッカムという菌根菌は世界中の多くの森林で優占する種です。針葉樹から広葉樹まで、たくさんの樹木と共生しています。この菌は、キノコを作ることはなく、有性繁殖をしません。かわりに、菌核という菌糸が集まった団子のようなものを作ってひろがります。だから、遠くはなれた場所からも全く同じ遺伝子型の個体が見つかります。菌根菌にもいろいろな繁殖様式があるのが分かってきました。
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